マーケティング事例

アシックスブランド秘話 - ブランドにビジョンはあるか?

創業者鬼塚喜八郎

「世界中の誰もがアスレチック・シューズを日常的に履いている。その日がくる。」1964年東京オリンピック開催の年に日本人の彼が言った言葉は、半世紀以上経った現在では現実のものとなった。アシックス創業者の鬼塚喜八郎が50年以上も前にナイキの創業者のフィルナイトに語ったブランド秘話を取り上げます。

アシックスの創業者が語ったブランドのビジョン

彼は長く、熱のこもった演説を始めた。少し前に思い描いたことがあるという。それは素晴らしい未来の光景だそうだ。

「世界中の誰もがアスレチック・シューズを日常的に履いている。その日がくる。」

彼は話を止めてテーブルの一人ひとりを見回し、同じ思いなのか確かめた。

アシックス創業者の鬼塚喜八郎の言葉

フィル・ナイト著 「SHOE DOG」 より

ナイキ創業者フィル・ナイトによる自伝的小説 SHOE DOG のこの場面は、ナイキ創業者のフィル・ナイトがアメリカでの靴の販売権を自分に委ねて欲しいという交渉に対し、アシックス創業者の鬼塚喜八郎氏がした演説です。

この二人が会合した当時の1964年は東京オリンピック開催の年。街中で日常的にアスレチックシューズを履く人々など全く見なかった時代です。そこから半世紀以上たち、街中ではアスレチックシューズをはく人々で溢れ、彼の創設したブランドアシックスはは日本のみならず、世界中から愛されるブランドとなり、彼の描いた未来は現実のものとなりました。

アシックス創業者の鬼塚氏の言葉こそまさにビジョンであり、また企業の存在意義でもありました。

 詳細は本でもhttps://store.toyokeizai.net/s/p/books/shoe-dog/

ビジョンとは世界をどう良く変革していくかのストーリー

ビジョンの例としてはキング牧師のスピーチも着目しましょう。マーケティングの仕事では出てこない事例ですが、広く世の中には優れたケースが溢れています。

1963年にリンカーン記念館で行われた "I have a dream" で知られるスピーチは実現したい未来を鮮やかに描き聴衆を動かしています。このスピーチは人種平等と差別の終焉を訴えた20世紀最高の演説の一つに上がっています。

私には夢がある。それは、いつの日か、この国が立ち上がり、「べての人間は平等に作られているということは、自明の真実であると考える」というこの国の信条を、真の意味で実現させるという夢である。

私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。

私には夢がある。それは、いつの日か、不正と抑圧の炎熱で焼けつかんばかりのミシシッピ州でさえ、自由と正義のオアシスに変身するという夢である。

私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である。

今日、私には夢がある。

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア Speech "I have a dream¹ "より

1) 国務省発行出版物 米国の歴史と民主主義の基本文書 日本語訳参照

文の長さや内容こそ違えど、先ほどのアシックスのビジョンと共通しているのは

  • 現在は違うが、未来では当たり前にしたい光景
  • 周りの人々からすれば実行不可能に思えるような、現実離れした光景
  • しかし当の本人が信じて疑わない光景であり、人を惹きつけるストーリー

ビジョンとは語り手が望む未来の光景であり、そこに人々が生きる生活が強く描かれているからこそ、聞いている聴衆を惹きつける力があります。

キング牧師のスピーチにおいても、彼自身が強く望んだ自分自身の幼い子どもが暮らす未来を語っています。

あなたのブランドにビジョンはあるか?

巷ではマーケティングとは、「商品に付加価値を付ける」「水を高く売る」などの手法であり、お金を稼ぐ手段という取り扱いをされているが如何なものでしょうか。

忙しい日常ではついつい商品便益や、売り上げ、競合との争いなどに目が向きがちだが、真のマーケティングの目的とは、市場の創造であり未来の光景を変えていくことである。その実現のため、商品(サービス)を作り、広めていく。そんな高尚な心意気を持っていこう。

たとえそれが世界中に広まらないかもしれない。しかしあなたが描いたビジョンは商品となり、サービスとなり、世の中を変えていく。

数十年後の自分自身の子どもや、後輩のための世界を作っていく。

そんな気概でブランド、マーケティングに取り組むことはワクワクしないだろうか。強いビジョンは人々を惹きつけ、実現の力となる。

「あなたのブランドを通して実現したい未来は何か。」

そんな問いを自分自身、チーム、クライアントを含め、話してみる日を作ってみてはいかがだろうか。

市場創造の例はこちらも参照 マーケティングによる市場創造とは I 常識を変えた事例紹介

ビジョンを語るリーダーについて リーダーとマネージャーとの『決定的な違い』とは

未来を生きるために 【キャリア・人生】人の価値・善く生きる事に関しての言葉


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